ここは、「月下独酌」Drinking alone under the moonと「月下独迹」Monologue by Moonlightから名を頂いて、「月下独呟」Monologue with Moonlightとしたエッセイ集です。
詳細は"Introduction"をご覧ください。
This is a collection of essays entitled "Monologue with Moonlight," named after "Drinking alone under the moon" and "Monologue by Moonlight.
Please see "Introduction" for details.
HS
令和5年4月28日付けにて、管理栄養士・栄養士に関わる医療法施行規則の一部改正がありました。
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【以下、医療法施行規則の一部改正】(抜粋)
○ 人員配置について報告することとされる、医療従事者の職種として厚生労働大臣が定めるものの改正(医療情報告示第 18 条関係)
・ 則別表第1第3の項第1号イ(1)(i)、(ii)及び(iii)、ロ(1)(i)、ハ (1)(i)並びにニ(1)(i)において、病院、診療所、歯科診療所及び助産所における、人員配置を報告することとされている。人員配置について報告することとされる医療従事者の職種については、厚生労働大臣が定めることとされており、当該医療従事者の職種については医療情報告示第 18 条において規定しているところ、管理栄養士及び栄養士を追加することとする。
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管理栄養士や栄養の業務は医療であり、 管理栄養士や栄養士が医療従事者と認識されるようになったわけで、大きな一歩であるように感じてます!
今後は2年に1度、偶数年12月31日現在で、氏名・住所・その他厚生労働省令で定める事項を就業地の都道府県知事に届け出ることが義務付けされますが、次回届出は令和6年12月31日現在の届出となります。
2023.5.10 HS
15. 「うれしいです」
いつからか、若い人たちからのメールなどでみられる表現で、「○○していただけるとうれしいです」というのがあります。
「○○していただけるとうれしいです」の「うれしいです」は既に敬語という方もいると思いますが、やはり目上の人やビジネスに使うのは避けた方がいいと感じますよね。「です」には断定的な意味合いもあり、強制的な感じをとられるのと、とても幼稚な感じがします。
さらに文法的にも間違っています。形容詞の「うれしい」に「です」をつけても丁寧な表現になりませんので、敬語として成立していません*。
英語では「うれしい」を「I'm glad/happy to...」 (happyは子どもが使います)といいますが、依頼表現は「I would appreciate if you could...」としますね。
特に卒業していく学生の皆さんには、社会人として「うれしい」に代わる正しい敬語表現を身につけてほしいと思います。
*「うれしい」は形容詞なので、「だ」の丁寧語である「です」をつけるのは正しくありませんよね。「うれしいだ」としてみる文法的にも間違っていることがわかります。
2023.3.12/HS
14. 脂肪細胞とアディポサイトカイン
月刊糖尿病(DIABETES)141号 <特集にあたって>より、一部改変
脂肪組織は白色脂肪細胞を主人にもつ.この主人は中性脂肪を脂肪滴という特有の細胞内器官に存分に貯め込む.しかし一旦全身がエネルギーを必要とするや否や,中性脂肪をすみやかにグリセロールと脂肪酸に分解して全身に供給するが,この脂肪の分解を抑制す
るためのインスリンの作用はとても低濃度から発揮される.すなわち白色脂肪細胞は可能な限りエネルギーを中性脂肪として蓄積し維持するための分子機構を備えているようであり,この脂肪組織のおかげで我々人類は飢餓の時代を乗り越えられてきたと考えられる.とくに内臓周囲の脂肪組織は直接的に肝臓にグリセロールとともに脂肪酸を供給し,脂肪酸はβ酸化によってアセチルCoAを生成しATP産生に使われるが,さらに肝臓は,脂肪酸からケトン体を合成し,脳へと供給してアセチルCoAへと変化させて神経細胞のエネルギー源とさせる.
このような脂肪組織とエネルギー蓄積・供給の関係は,過栄養や運動不足という現代社会においては,内臓脂肪組織への脂肪過剰蓄積という糖尿病や動脈硬化の共通基盤として基本概念,すなわち「メタボリックシンドローム」として松澤佑次大阪大学名誉教授らによって提唱されたのだが,当時きわめて先駆的な考えであった.一方で,自身に脂肪も蓄えながら,必要な時に迅速にβ酸化によって得たアセチルCoAを利用して熱を産生する褐色脂肪組織の存在も斉藤昌之北海道大学名誉教授らによってヒトにおいてもその存在が明らかとされ,さらには白色脂肪組織においてさえも,必要に応じて出現し熱を産生するベージュ脂肪細胞が存在することも明らかとされた.
では一体何故,「内臓脂肪組織への脂肪過剰蓄積」が糖尿病などの生活習慣病を起こすのか,また実際,熱を産生する褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞を活性化させることで生活習慣病が改善させられるのか,基礎研究とともに臨床研究や疫学調査が車の両輪のごとく実施され,その分子機構が解明されて臨床応用への道筋ができてきた.その研究での大きな成果の1つが脂肪細胞特異的に分泌する生理活性物質,アディポサイトカインの発見である.私は幸運にも,次々に発見されるアディポサイトカインの作用を研究の現場で直接的に観察する機会を得た.表現は難しいのだが,化学療法剤のようなものをマウスに投与したときのダメージとしての摂食抑制や血糖値の低下ではなく,健康で元気で走り回るマウスの表現型として,レプチンによる摂食抑制やアディポネクチンのインスリン抵抗性改善作用を目の当たりにして,当時とても感動したのを今も鮮明に覚えている.
2022.7.21/HS
13. 根菜研究グループができました!?
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2021.4.1/HS
4月1日はエイプリルフールApril Fools' Dayです、、、念のため。
#エイプリルフール
12. 徳島医学会と徳島県人、、、それから鰻!?
M2の原加奈子さんが第45回徳島医学会賞受賞講演を徳島県医師会館にて行いました!
夜遅くまで実験していたことが報われる瞬間でしょうか。県医師会の皆さんの前で堂々と発表されたのが印象的でした。
ところで徳島医学会は、なんと262回の開催を数えます。年2回の開催ですので、設立年は1890年(明治23年)!大森貝塚で有名なエドワード・モースの写真(小西 四郎, 岡 秀行. 百年前の日本−モースコレクション(写真編) 小学館 2005/1/20 ISBN-13:978-4095630151)とかで当時の暮らしを見ますと、日本の田舎はまだまだ大河ドラマ「青天を衝け」でみる江戸時代末期と変わりません。その当時から医学会を開催して切磋琢磨するとは真面目で勤勉な徳島県人だからこそですかね。一方で藍や木材商人を輩出してきた県であったためでしょうか、商人気質を残す方にもちょくちょく出会います。
先日研究の打ち合わせに来られたOGのYさんとT先生の3人で昼食に鰻を食べに「うな久」さんに行った時の話を少し。相席させて頂いた板東さんが某地元企業の重役の方で、お連れの方お二人とも話がはずんで1時間ちょっと。先に席を立たれたのですが、驚いたことに我々の会計も済ませて頂いて立ち去られてました。徳島県人気質とは関係するかどうかは分析が必要ですが、とても印象深い出来事でしたので、、、ここに記録に残しておきたいと思いましたので、、、 余談でした。
2021.3.21/HS
11.心不全の新たな国際ステージ分類と医学知識!
日本心不全学会(JHFS)、米国心不全学会(HFSA)、欧州心臓病学会傘下の心不全学会(HFA-ESC)が合同で策定した心不全の国際定義を発表しました。
(Eur J Heart Fail. 2021 Feb 19. doi: 10.1002/ejhf.2115. Online ahead of print.)
「増え続ける高齢者の心不全(循環器病情報サービス、国立循環器病研究センター)」に対して、新たなステージ分類が機能することが期待されています。
内容はMedical Tribune誌にうまくまとめられています。
2021.3.18/HS
さて、医学知識は加速度的に増加しており、専門分野でも少しさぼると最新のデータを見落とすことがあります。Densen先生の報告によりますと、「It is estimated that the doubling time of medical knowledge in 1950 was 50 years; in 1980, 7 years; and in 2010, 3.5 years. In 2020 it isprojected to be 0.2 years—just 73 days.(Densen P. Challenges and opportunities facing medical education. Trans Am Clin Climatol Assoc. 122:48-58. 2011.PMID: 21686208) 」だそうで、2011年の時点で2020年には医学知識の倍化時間が0.2年と予想しています!上手く、効率よく、正しい知識を得る方法を使いこなす訓練も必要でしょうか。
2021.3.24追記/HS
2010年1月に徳島大学において糖尿病臨床・研究開発センターが設立されました。
これまで、地域課題である糖尿病の克服のため、研究の推進及び糖尿病臨床の向上に努めて参りました。
その10年の歩みをまとめましたので、ご高閲いただければ幸いです。
2021年1月26日
(糖尿病臨床・研究開発センターHPより転載)
阪上が2009年に着任し、センターには2010年12月に参画、その後2013年に黒田助教が大学院生・学振研究員から特任助教として、また堤講師が2015年に合流されています。
ご支援i頂きました皆様、深く感謝と御礼を申し上げるとともに、引き続き、ご指導、ご支援の程、心よりお願い申し上げます。
2021年1月27日/HS
拝啓
貴社ますますご盛栄のこととお喜び申し上げます。
平素は格別のお引き立てにあずかり、厚く御礼申し上げます。
さてこの度は、第39回日本肥満学会の特製弁当を作製するにあたり、格別のご高配を賜り誠にありがとうございました。
皆様のご支援によりまして、日本肥満学会員の皆様にも大変喜んで頂き、無事使命を果たすことが出来ました。
ご芳志に対し、深く感謝と御礼を申し上げます。
引き続き皆様方のご指導、ご支援の程、心よりお願い申し上げます。
敬具
なお、敬称は略させていただきました。
協賛(順不同)
有限会社うずしお食品
有限会社志まや味噌
株式会社昌栄・イルローザ
JAとくしま・上勝支所
株式会社いろどり
株式会社イフリ
徳島クワトロシトラス
徳島大学 渡辺涼乃 鈴江夢実
2018年10月15日
徳島大学大学院医歯薬学研究部代謝栄養学分野
堤 理恵
阪上 浩
やはりこの時期忙しくて、更新できていないので、今年はこれで。
3月末に一部学生の居室が移動になったので、あいさつ代わりに新しい部屋の前に掲示しようと思ったのですが、ラボのプリンターの入れ替えや自身プリンターの調子が悪く印刷できないのでHPでのみになっています。
「代謝の研究者→イノシシ」、「データ→エサ」などに読み替えてください。
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オリジナルは
愛媛県自然保護課発行の【興奮したイノシシはとても危険です!】
https://www.pref.ehime.jp/h15800/documents/sisi_chirasi03.pdf
です。
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2018.3.30/HS
4月1日はエイプリルフールApril Fools' Dayです、、、念のため。
#エイプリルフール
#居室移動
松本悟先生(神戸大名誉教授、元神戸大学医学部脳神経外科学初代教授)が心不全のため7日にご帰天されたのを報道で知りました。
日本の脳神経外科医の「父」といわれ、小児脳神経外科、特に水頭症のシャント手術の世界的権威であった記憶しています*。学生時代のポリクリ講義で、質問に答えられない学生、すなわち私に「答えろ」と迫ってきた迫力が単に怖いとかではなく、緊張感とユーモアがあって、熱意あふれるご指導を頂いたことが今でも鮮明に思い出すことができます。先生の一部の妥協も許さず、厳しく生きてこられた人生が学生にも伝わってきて、こちらが恥ずかしくなる思いもしました。身をもって学生を指導された先生でもあり、当時学生に最も尊敬されていた先生でありました。
松本先生、天国で安らかにお眠り下さい。
2017.11.15/ HS
*神戸大学医学部附属病院脳神経外科HPの「教室の歩み」をご覧ください。
http://www.med.kobe-u.ac.jp/neuro/Ayumi-1.html
Mental state in terms of challenge level and skill level, according to Csikszentmihalyi's flow model
Csikszentmihalyi, M., Finding Flow, 1997. Source: Wikimedia Commons/Public Domain
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昨今の新入社員は頼まれた仕事を黙々とこなすことが出来るが、学習意識の貪欲さが足りないとか、思考に柔軟性がないとか言われて久しい。仕事に対するモチベーションを維持する能力を身につけて自分から行動をおこす学生を採用したいと企業は考えているということだが、企業が成長・発展し、かつ個人が生き抜いていくための方策としては当然のことである。
さて我々の足元に目を向けると、医学研究や臨床の現場でも同じように感じている先輩研究者や医療従事者も多いのではないか。必要な課題を理解したうえで、自らが行うべき課題を設定し自律的に学び続け、行動を起こして成果を得る能力をもつ人材を『自律型人材』といい、その育成が企業のみならず大学においても最も重要な仕事になってきたのだ。
実際、徳島大学の学生は、多様な価値観を尊重しながらモチベーションを維持してチャレンジする『自律autonomy』型の人材となって大学を卒業していってくれているのであろうか。教師や先生といわれる人たちは「もっとモチベーションをもって積極的に取り組め」とはよく言うものの、けだし「モチベーションを維持」する難しさは万人の理解するところである。
この能力は本人特性の影響が大きいものだと以前は考えていたのだが、そう言ってしまえば、私たちに教育現場での仕事はもうないかもしれない。実は「モチベーションを維持」する能力は研究活動や学部実習を通じて獲得可能であり、学生と一緒に実践することでその能力を身につけてもらうのが私たちの仕事の一つである。
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さて「Flow」1)という心理学的概念をご存じだろうか。心理学者であるCsikszentmihalyiが20年以上前に提唱したもので、その後多くの書籍で引用されていて、また解説本もたくさん出版されており、改めて述べる必要がないかもしれないが少し紹介したい。
Flowとは、「一つの活動に深く没入しているので他の何ものも問題とならなくなる状態、その経験それ自体が非常に楽しいので、純粋にそれをすることのために多くの時間や労力を費やすような状態」(Csikszentmihalyi、邦訳5p)をいう。
人々が最高の状態の時どのように感じたかを表現する際、たびたび「私は流れ(flow)に運ばれたのです」や「流れている(floating)ような感じだった」と述べたことに起因する(Csikszentmihalyi、邦訳15p)。簡単に言ってしまえば、「人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態」(Wikipediaより)だ。
この状態になれば究極に「モチベーションが維持」されている状態なのであろう。外から与えられる報酬にほとんど依存せず、行為を行うこと自体が目的である活動となっているが、最終的には圧倒的な成果をあげることができると言われている。
Flowにはいくつかの特徴があるようだが(詳しくはCsikszentmihalyiの著作を見て頂くとして*)、私たちは研究室配属などの「教育」機会を通じて、学生とともに「はっきりとした目標」を立て、「研究活動の結果からフィードバック」を与えてくれるシステムの中で、現在研究室で行っている活動に自分の能力が適合し、その経験それ自体が非常に楽しいと思えるような研究活動を提供できるようにと努力しているつもりではいる。しかしながら、なかなかお互い上手くハマってくれないのも実情である。
(蔵本祭パンフレット寄稿文を一部改変して掲載)
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1)Mihaly Csikszentmihalyi, Flow: The Psychology of Optimal Experience, Harper Perennial Modern Classics、(邦訳)今村浩明, フロー体験 喜びの現象学, 世界思想社
*Csikszentmihalyiによれば、明確に列挙することができるフロー体験の構成要素が存在する。彼は8つ挙げている。
1. 明確な目的(予想と法則が認識できる)
2. 専念と集中、注意力の限定された分野への高度な集中。(活動に従事する人が、それに深く集中し探求する機会を持つ)
3. 自己に対する意識の感覚の低下、活動と意識の融合。
4. 時間感覚のゆがみ - 時間への我々の主体的な経験の変更
5. 直接的で即座な反応(活動の過程における成功と失敗が明確で、行動が必要に応じて調節される)
6. 能力の水準と難易度とのバランス(活動が易しすぎず、難しすぎない)
7. 状況や活動を自分で制御している感覚。
8. 活動に本質的な価値がある、だから活動が苦にならない。
フローを経験するためにこれら要素のすべてが必要というわけではない(Wikipediaより)。
2017.11.2/HS
分子遺伝学を中心とした基礎研究に関する研究会が4月1日に新たに発足した。メンバーは、国立国際医療研究センター理事長である春日雅人先生が神戸大学医学部で教室を主宰されていた時に直接ご指導を仰いだ研究者であり、現在全国に散らばっているPI*とその教室メンバーで構成された研究会である。さながら神戸大学医学部春日研究室の同窓会であるが、発起人である神戸大学糖尿病・内分泌内科教授小川渉先生の意図は、当時の春日教室で毎月開催されていたミーティング(データを春日先生にプレゼンして直接ご指導頂くミーティングで「データ・クラブ」と称していた)をもう一度開催して、先生の指導の下、活発な議論をもって研究内容をさらに深めようという趣旨の研究会である。
研究会で先生は、PI*や各ラボの助教・大学院生の発表に対して、面白い思う研究(これは想像だが)に対しては的確にご質問されるところは以前と全く変わっていないし、研究内容の意義を普遍的に考察され指摘されるところはさらに凄みを増したようにも思われた。この4月に国立国際医療研究センター理事長をご退官されるが、今回のその挨拶においても、「少しは論文が読めるようになる」とコメントされたのも先生そのもの、であった。今後も日本の医学研究を引っ張っていかれるのに違いない。
さて、本研究会を今回取り上げたのは若い人に是非とも伝えたいことがあったためである。春日先生が基調講演「糖尿病研究に期待すること」の中で、「留学で研究者として学んだこと」をお話しなされた。以前の春日先生の同様な講演で聞いたり、「武田医学賞100人の横顔」などで読んだりした人もいるだろうが、私共の若い研究者に知ってもらいたいのでここに載録して、伝えたい。
留学で研究者として学んだこと
1.独立心を持つ
2.ユニークな点(アドバンテージ)を利用する
3.最新の実験技術・解析技法を積極的に取り入れる
4.Serendipityは存在する
(MDF基調講演「糖尿病研究に期待すること」より)
全く持ってagreeできるものであるので詳しい解説は不要だとは思うが、この4点は研究者が成功するためには最も重要な素養だと思うし、心持次第ですぐにでも実践できるものであるだろう。伝聞にはなるが、大学院生には何らかの機会に一度お伝えしたいという思いを深くした基調講演であった**。
2017.4.3/HS
*PI(Principal investigator): 「PI の定義については、引き続き議論し明確にする必要があるが、例えば、1)独立した研究課題と研究スペースを持つこと、2)研究グループを組織して研究を行っている場合は、そのグループの責任者であること、3)大学院生の指導に責任を持つこと、4)論文発表の責任者であること、などが考えられる。」
(総合科学技術会議基本政策専門調査会「基礎研究強化に向けて講ずべき長期的方策について― 基礎研究を支えるシステムの改革 ―」(平成22年1月27日)より)http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/037/attach/1358880.htm
**「PIとして重要なこと」やPAIDS (paralyzed academic investigator’s disease syndrome) (Goldstein-JL. On the origin of PAIDS (paralyzed academic investigator’s disease syndrome). Journal of Clinical Investigation 78: 848-854. 1986)に関してもコメントされたが、こちらは次の機会にしよう。特にPAIDS(paralyzed academic investigator’s disease syndrome、麻痺状態の大学研究者症候群)は現在医学部において最も重要な問題であると思う。
4. 代謝栄養学の研究者に研究データを与えないでください
徳島大学代謝栄養学分野 学生のくらし安全局生活安全課代表 阪上 浩
しばらく更新していないのですが、今回はこれで。
月曜日まで私の部屋の前のホワイトボードに掲示してあります、、、悪しからず。
「野生の研究者→野生鳥獣」、「研究データ→エサ」で読んでください。
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オリジナルは
野生鳥獣にエサを与えないでください【お願い】
http://www.pref.tokushima.jp/docs/2014062700073/
です。
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2017.3.31/HS
4月1日はエイプリルフールApril Fools' Dayです、、、念のため。
#エイプリルフール
11月14日は世界糖尿病デー。2型糖尿病による社会損失はどれくらいか?-調べる機会があった。その一部を載録す。
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米国糖尿病学会(ADA)は、米国の糖尿病による負担額が2012年に23兆円(2,450億ドル)と報告した(Diabetes Care 2013)。2007年の16兆3,000億円(1,740億ドル)に比べ、5年間で41%増加したことになる。糖尿病や糖尿病合併症の直接的な医療費に加えて、糖尿病によって損なわれた経済的損失などを加えて算出した額であり、医療機関での診療や治療薬などのために16兆5,000億円(1,760億ドル)、糖尿病のために減少した生産性や社会的損失のために6兆4,000億円(690億ドル)が、それぞれ費やされた計算された。
科学技術・学術政策研究所(文部科学省)の科学技術動向研究センター2014年度報告によれば、生産年齢層では、がんよりも糖尿病の影響が大きい(下図参照)。一方、総患者数は循環器疾患より小さいが、糖尿病が心筋梗塞や脳梗塞などの血管合併症の原因となることから、糖尿病は我が国における労働力の量・質の確保に大きく関与しているとされている。
このような生産性や社会的損失は、糖尿病が比較的若い時期に発症するためであるが、未治療やその後の治療中断によって発症する糖尿病合併症の影響も大きい。すなわち、最も生産性の高い時期に治療を受けないことにより生じる社会的な損失は甚大となることから、発症の予知や予防も重要な政策課題となっている。
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現在米国で糖尿病人口は2,600万人に上るが、7900万人が2型糖尿病を発症する危険性の高い糖尿病予備群とされている。この糖尿病予備群の半数近くは10年以内に糖尿病を発症することが知られているが、糖尿病のある人の医療費は、そうでない人に比べ2.3倍高くなると報告されている(Diabetes Care 2013)。
わが国でも同様に、健康診断を受けた時点で血糖値の異常が見つかった人は、「異常なし」の人に比べ、10年後の医療費が約1.7倍となることが報告されている(政府管掌健康保険における医療費等に関する調査研究報告書)。
さらに糖尿病合併症が進展してしまってから治療を開始すると、社会的損失に加え医療費は当然非常に高いものとなり、さらに合併症が進行すると透析療法などの医療費が必要となることから、合併症の進展予防も重要な政策対象であると言える。
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一方、糖尿病治療薬の観点から見てみると、富士経済株式会社の調査報告書(http://www.group.fuji-keizai.co.jp/press/pdf/161031_16088.pdf)によれば、糖尿病治療薬の市場はこの7年間で倍増しており、2016年に前年比6.3%増の4,886億円が見込まれている。さらに拡大傾向は今後も続き、2024年市場予測(2015年比)では、6,431億円(39.9%増)と予想されている。
糖尿病患者数や治療患者数ともに増加していることが、糖尿病治療薬の高い成長率を維持する最大要因になっていると考えられるが、発症の若年齢化による合併症の増加や、高齢化にともなう罹患期間の長期化により、薬物療法が必要な患者数は大幅に増加するだろうと予測されている。
さらに、糖尿病性神経障害や糖尿病性腎症、その他糖尿病合併症を対象とした糖尿病合併症治療剤の市場は2016年に142億円が見込まれているが、これは糖尿病治療薬の市場規模に比べて、糖尿病性腎症治療剤や糖尿病性皮膚潰瘍治療剤では新規薬剤が10年以上市場していないこと、さらには大半の製品でジェネリック医薬品が発売されている影響もあり、2016年の市場はマイナス成長となっているようだ。
しかしながら、今後の糖尿病性神経障害治療薬や糖尿病性腎症治療薬などの合併症治療の開発は、糖尿病患者数の増加に伴って大きな市場が得られる分野であると報告されている。
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以上のことから、糖尿病による社会損失を防ぐためには、糖尿病発症の予知と予防に加えて、糖尿病を根治可能な低分子医薬品の創薬や新たな合併症治療薬、再生医療などの新規治療や治療薬が必要とされていると言える。
―つづく―
2016.11.15/HS
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生活習慣病は遺伝的体質に加え、食生活の偏りと運動不足といった好ましくない生活習慣を長年積み重ねることで発症する病気の総称であり、日頃の生活習慣の改善、特に適切な量と質の栄養摂取や適度な運動の実施は生活習慣病の発症予防や重症化の遅延に有効であるのは周知の事実あろう。さらに最近では、10代や20代における生活習慣病の発症も増加しており、学童期の子供の生活習慣の乱れが原因とも考えられている。
このような「生活習慣」の健全化の必要性が注目される中、近年の健康食品のブームにより、その市場は1兆2千億円(健康産業新聞、平成23年12月公表)まで拡大してきており、新たな保健機能食品制度1)は更なる追い風になるものと思われる。実際米国では、機能性表示制度2)(DSHEA:Dietary Supplement Health and Education Act)を導入してから市場規模は3倍に拡大したようだ。
多くの難点を抱えてまま実施された米国DSHEA制度の問題点を考慮した上で、本邦の保健機能食品制度がスタートしたはずだが、市場の拡大に伴って健康被害の増大も懸念されている。さらにTPP協定の締結が追い風となって食品研究が進み、新たな機能性成分が同定されることも期待される。
しかしながら、健康食品は低たんぱく食品やアレルゲン除去食品などといった病者用食品(特別用途食品)とは現時点では明確に区別されるべきであろう。健康食品の利用に関しては、生活習慣の改善や健全化につながるのではあれば、その効果は大いに期待できる。ただし、セフティーネットとして機能している医療とは違い、食品の健康維持機能はモチベーションにしかならないことに注意が必要だ。
すなわち、生活習慣病の予防の視点なくしては、現時点では健康食品は成り立たない。ここに病(医)と健康(食)の接点があり、医学・栄養学・農学などが垣根を超えて、予防から治療まで連続する包括ケアシステムを作り上げることができるかが今後の課題であり展望でもある(下図参照)。
(雑誌「CLINICAL CALCIUM」巻頭言を一部改変して掲載、解説図を追加)
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1)厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/
hokenkinou/
2)FDAホームページ http://www.fda.gov/Food/DietarySupplements/
2016.8.18/HS
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こどものギモン
ある夏の日の午後、庭の草刈りをやっている親子の会話、、、。
子供は小学3年生の女の子、親は大学で栄養学を教え、自身は大学院生とともに糖尿病や肥満の発症原因や治療法を探し求める研究者。
子:「パパ、蟻さんがいるよ。」
親:「一列に並んで、たくさんいるね。」
子:「パパ、どうして蟻さんはこんなに小さいの?」
「どうして?」「何故なの?」と、子供はいつも質問の嵐である。
また、わが子の質問にできるだけ誠実に答えるのが親の責任であり、研究者の心構え、、、しかし子供にも納得できるような答えは相当難しい。
そこで、少々卑怯だが逆に質問してみる。この手の方法は困った時に授業でもよく使う。
親:「そうだね、蟻さんは小さいね、じゃあ動物園でみた象さんはどうかな?」
子:「大きかった!」
親:「鯨さんは?」
子:「もっと大きい!!」
親:「そうだね、君が象さんや鯨さんが大きい、蟻さんが小さいと思ったのは何故だろう?」
子:「わからん、、、パパ、パパ見て、こんなところに、、、。」
小学3年生とはいえ、親としてはもう少し議論を深めたかったが、子供の興味は既に違うところに行ってしまった。
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おとなのコタエ?
この子供がみた生物の大きさとは、自分を基準に相対的に決定されているということで意味をもつものであり、そこには絶対的な大きさの意味合いなどありはしない。
しかしながら時として、子供のギモンは科学者からみると本質を突いている場合もある。
わかりやすいように、ねずみとヒト、象で考えてみる。
光学顕微鏡が17世紀初頭に発明された後、ねずみやヒト、象を含めて、「全ての生物は細胞から構成されている」というウイルヒョーの細胞説から細胞生物学が始まる。その時点に戻って個体の大きさの観点から、ねずみとヒト、象の細胞を顕微鏡で観察したとする。そこで研究者は驚愕する。ねずみとヒト、象の細胞の大きさに違いがみあたらない!
では、ねずみとヒト、象の違いはどこからくるのか。
同じ大きさのもので作り上げられたものの大きさが異なる理由はただ一つ;数が異なるからである。
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科学者の興味
ここまで来ると科学者の興味が沸々と湧いてくる。
ではでは、ねずみとヒト、象で細胞の数が異なるのは、どのように決定されているのか。
もちろん遺伝子の中に細胞数を決定する情報が書き込まれていて、それによって個体の細胞数が決定されているのであろうが*、神経細胞など特殊な細胞を除いて、細胞自身も常時入れ替わっている。そのような状況で実際のどのように細胞数が制御されているのか、今のところ明確な答えはない。
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科学者の仕事
しかしながらここまででは、科学評論家でも科学者でも同じ。
科学者・研究者と人前で名乗る限りは、ここから(作業)仮説を立てて、実験で証明しなければいけない。
これが大学での我々の仕事であり、言い切ってしまえば、「こどものギモン」に対して、「おとなのコタエ」を探しているのである。
すなわち科学者とは、突然どこからか科学者になるのではなく、子供のギモンの延長であって、その不思議をサイエンスするのが科学者である。
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さてさて
私たちの研究室は徳島大学の蔵本キャンパスにあるが、ここの学生は医療系が中心で、専門職に就くためには最終的には国家試験という関門が待ち構えている。どうしても「こどものギモン」を忘れて、コタエのみを覚えることに躍起となる。
日ごろの勉強をひとまず置いて、いろんなギモンに対して、サイエンスマインドで考え、サイエンスを楽しむ機会を提供するためには、私たちは大学というフィールドで何ができるのだろうか。
(蔵本祭パンフレット寄稿文を一部改変して掲載)
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ちなみに当時小学3年生であった三女は今や高校2年生である、まさしく「光陰に関守なし」である。
*「細胞数が決定されている」とは、とてもrobustに(頑強に)細胞数が決定されていると言える。例えば、我々ヒトの細胞が発生段階で4回多く分裂するだけで、体重は60kg→120kg→240kg→480kgとなって小さな像並みとなる。一方、細胞分裂が11回少なれば、体重は60kg→30kg→15kg→→→→58.6g→29.3gとなってネズミ並みとなる。すなわち個体の細胞数(受精卵の分裂回数)はとてもrobustに決定されていることがわかる。
2016.6.29/HS
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「月下独酌」と「月下独迹」
「月下独酌」はご存知、酒仙・李白の五言古詩。
"自分と影法師と月の三人"で春の酒を楽しむ。
花間一壺酒、獨酌無相親。 花間一壺の酒、独り酌みて相親しむもの無し。
舉杯邀明月、對影成三人。 杯を挙げて明月を邀へ、影に対して三人と成る。
「月下独迹」を知る人はとても少ない。
静岡にあった通信添削指導の会社、増進会(現在のZ会)の英語副読本(エッセイ)のタイトルである(岩垣守彦著、Kevin P.Dobbyn訳)。家の本棚のどこかに今もあるはず。
迹とは、足跡といった意味であり、跡、蹟は迹の異体字。
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「月下独呟」
ここは、「月下独酌」Drinking alone with/under/beneath the moon、「月下独迹」Monologue by Moonlightから名を頂いて、「月下独呟」Monologue with Moonlightとしたエッセイ集である。
先ずはファイルから見つけてきた文章を、部屋の窓から差し込む月明りといっしょにアップすることにしよう。タイトルは大げさだが、独白(モノローグ)よりも独呟、差し詰め、現代のTwitter(呟く)である。
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「Monologue with Moonlight」に込められた響き
連続する単語が同じ音の子音または文字で始まる頭韻が使われており、ユーモラスで音楽的雰囲気を醸し出してテンポを作ってくれる。
busy as a bee green as grass
Big Ben Intel Inside
Coca-Cola World Wide Web
Mickey Mouse Woody Woodpecker
などが、よく紹介されている。
Monologue by Moonlightが余りに素敵なリズムなのでMonologue with Moonlightとした次第。
ちなみに日本では、漢詩の伝統からか脚韻が和歌や俳句に使われるらしいが、頭韻の例が載っていた(頭韻法 - Wikipedia)。
滝の音は 絶えて久しく なりぬれど
名こそ流れて なほ聞こえけれ
百人一首 大納言公任
タ音とナ音が韻を踏んでいて、さらに「滝」と「流れ」、「音」と「聞こえ」という縁語も配置されているのだそうだ。
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よし、これでタイトルの完成だ、
「月下独呟 Monologue with Moonlight」
T先生の「代謝日和/たいしゃ*びより」にようにアップ出来るだろうか、不安でいっぱいFull of fear。
2016.3.29/HS